世界最大のコーチング団体である国際コーチング連盟・ICF(International Coaching Federation)が発行している認定資格は、信頼性の高い資格として認知されています。ICFの資格には、初級レベルのACC、中級レベルのPCC、そして最上級のMCCと、コーチング学習やコーチング実施実績に応じた3つの資格が存在します。しかし、資格ごとに取得要件や試験内容が大きく異なるため、どのレベルが自分に適しているのか、またそれぞれの難易度がどの程度なのかは、プロコーチ資格取得を目指す方にとって疑問の一つでしょう。そこで、本記事では、ICF資格の各レベル(ACC・PCC・MCC)に求められるコーチング学習やコーチング実践の難易度や取得要件について徹底比較していきます。1. ICF:国際コーチング連盟とは?ICF国際コーチング連盟は、1995年に設立された国際的なコーチング非営利団体であり、コーチの専門性を担保するための基準や倫理規定、認定資格の発行を行っています。ICFの認定資格保有者は、全世界で6万人以上、日本では1100人以上であり、その認定資格は、クライアントからの信頼や業界内での評価を高める重要な指標となっています。2. 3つのICF認定資格ICF認定資格には、基本的には以下の3つのレベルに分かれています。 ACC(Associate Certified Coach):初級レベル。コーチングの基本技術と一定のコーチング実務経験を有するコーチ向け。 PCC(Professional Certified Coach):中級レベル。より高度なスキルと実績が求められるコーチ向け。MCC(Master Certified Coach):最上級レベル。業界トップレベルのコーチング能力と豊富な実績を持つプロフェッショナル向け。これらのレベルごとに、コーチング学習時間、コーチング実務経験、試験内容などの要件が設定されており、取得の難易度は段階的に上がっていきます。3. ICFコーチング資格各レベルの難易度と取得要件の比較(1) ACCの取得要件とポイントACCは、ICF資格の中で最もエントリーレベルに位置します。コーチングの基本概念やスキルを身につけ、プロコーチとして活動するため、まずは取っておきたい資格です。初心者でも比較的取り組みやすい内容になっており、資格取得のスタートラインと位置づけられています。主な取得要件• 必要なコーチングトレーニング数:60時間以上• コーチング実務経験:100時間以上。なお、そのうち75時間以上は有償コーチングとして提供されてなければならない。• メンターコーチング:PCCまたはMCC資格保有者、あるいはACC資格を1回以上更新しているコーチから、10時間以上受ける必要あり。難易度のポイントACCはICF認定資格において、一番難易度が低い資格です。しかし、コーチング学習時間は60時間以上、コーチング経験時間は100時間以上と、決して簡単ではありません。長期的かつ持続可能な学習と実践の経験を積める計画をたてることがとても大切です。(2) PCCの取得要件とポイントPCCは、ACCよりも高度なスキルと実績が求められる中級レベルの資格です。一定のコーチング経験を積み、より深くクライアントの思考を探索するスキルや、自己のコーチングスタイルを確立していることが求められます。主な取得要件• 必要なコーチングトレーニング数:125時間以上• コーチング実務経験:500時間以上。なお、そのうち450時間以上は有償コーチングとして提供されてなければならない。• メンターコーチング:PCCまたはMCC資格保有者から、10時間以上受ける必要あり。難易度のポイントPCCでは、実務経験の豊富さと高度なコーチング倫理への理解が求められるため、自己のコーチングスキルを客観的に評価し、改善していかなければなりません。また、コーチング経験時間数が500時間以上となるため、数年単位での計画が必要となります。(3) MCCの取得要件とポイントMCCは、ICF資格の中で最も高いレベルに位置し、業界トップクラスの実績とコーチング能力が要求されます。MCCを取得することで、コーチとしての究極の信頼性と専門性が認められるため、グローバルな市場で活躍するための重要な資格となります。主な取得要件• 必要なコーチングトレーニング数:200時間以上• コーチング実務経験:2500時間以上。なお、そのうち2250時間以上は有償コーチングとして提供されてなければならない。• メンターコーチング:MCC資格保有者から、10時間以上受ける必要あり。難易度のポイントMCCは、単なる知識やスキルだけでなく、コーチとしての深い洞察力、リーダーシップ、そして自己内省の力が問われます。実績を重ねたベテランコーチのみが目指せるレベルであり、最も難易度が高い資格です。世界のICF認定資格者の中で、MCCを取得しているのはわずか4%であることからも、その難易度がわかります。4. 資格取得のための共通ポイントと対策いずれのレベルにおいても、以下のポイントは共通して重要です。• 実務経験の積み重ねコーチングセッション数を重ねることは、すべての資格において最も重要な要素の一つです。コーチングの実務経験を記録し、クライアントからのフィードバックを得ながら改善していくことが必要です。• 継続的な学習とトレーニング各レベルに応じたトレーニングプログラムや勉強会、オンラインコースを活用し、理論と実践をバランスよく学ぶことが大切です。模擬試験や過去の受験者の体験談も、試験対策として役立つでしょう。• メンターとの連携経験豊かな認定コーチからの指導は、自己の課題を客観的に見つめ直す絶好の機会です。定期的なメンターセッションを通じて、スキルの向上と自己改善に努めましょう。5. 資格レベル別に向いている人の特徴各資格を取得する上で、どのような人が向いているのでしょうか。ACCが向いている人コーチングの理論と基礎を習得したい人 これから実務経験を積み、最初の一歩として資格を取得したい人 基本的なコーチング技術や倫理を学ぶことに興味がある人PCCが向いている人すでに一定のコーチング実績があり、スキルアップを図りたい中級者より複雑なコーチングケースに対応し、自己のスタイルを確立したい人クライアントからの信頼性を高め、専門的な指導力を身につけたい人MCCが向いている人豊富な実務経験を有し、業界でトップレベルのコーチング能力を証明したいベテラン自己内省や継続的な自己研鑽に意欲があり、国際的なネットワークを活用して活躍したい人コーチング理論・実践の両面で卓越した能力を発揮し、業界をリードする存在を目指す人6. ICF認定資格についてまとめICFコーチング資格は、ACC、PCC、MCCといったレベルごとに異なる要件と難易度が設定されており、あなたのキャリアや実績に応じたステップアップが可能です。ACCは、コーチングに取り組む方にとって最適なスタートライン。PCCは、実務経験を積み、より高度なスキルを習得するための中級レベル。MCCは、業界最高峰のコーチとしての実績と能力を証明するための最上級資格。どのレベルを目指すにしても、実務経験の積み重ね、継続的な学習、そしてメンターからの指導が不可欠です。まずは自身の現状と将来の目標を見直し、どの資格レベルが最も適しているのかを検討しましょう。正しい準備と実践を積むことで、あなたのコーチングキャリアは飛躍的に向上するはずです。なお、さらに詳しいICF認定資格についてはこちらの記事をご覧ください。【2025年】国際コーチング資格取得について:特徴や選び方をまとめて解説次のステップとして、ICF公式サイトや各認定トレーニングプログラムの詳細を確認し、無料説明会や個別相談に参加することをおすすめします。ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジは、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジは、ICFの認定を受けたコーチングスクールであり、ウェルビーイングを重視した独自のカリキュラムを展開しています。このスクールでは、コーチングの基礎から実践的なスキルまでを、学術的な視点を取り入れながら体系的に学ぶことが可能です。指定されたプログラムを受講し修了することで、ICF認定資格の取得を目指すことができます。著者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士、ウェルビーイング経営アドバイザー。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジーRussell Well-being Coaching Collegeー」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所、弁護士会まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。最終更新日 2025年3月6日■関連記事・【2025年】国際コーチング資格取得について:特徴や選び方をまとめて解説・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・コーチングの効果的な勉強法は?学び方やおすすめのスクールの選び方について・ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは・ICF認定コーチングスクールとは?取得できる3つの資格も合わせて紹介■人気記事・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト 避けるべきも紹介・質問の価値を高めるコーチングスキル傾聴とは?NG例もあわせて徹底解説・【コーチングの承認とは?】人の成長を促すスキルを3つの効果と注意点をあわせて紹介・コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説