コーチングとは、対話を通じてクライアントの思考を整理し、自発的な気づきと行動を促すプロセスです。しかし、「コーチングに向いている人ってどんな人だろう?」「いいコーチとしてどんなスキルを習得すべきなんだろう?」と疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、コーチに向いている人の特徴や、習得すべきスキルについて詳しく解説します。コーチングを学びたい方は、ぜひ最後までご覧ください。目次1. コーチングとは?(1) コーチングの定義コーチングとは、対話を通じてクライアントの思考を整理し、自発的な気づきと行動を促すプロセスです。コーチは答えを与えるのではなく、適切な質問やフィードバックを通じて、クライアントが自ら答えを導き出せるようにサポートします。ビジネス、教育、スポーツ、ライフデザインなど、さまざまな分野で活用されており、クライアントの行動促進が目的です。この手法は、クライアントが現状の課題を乗り越え、目標達成に向かう力を最大限に引き出すことに焦点を当てています。個人が自身の能力を信じ、主体性を持って行動できるよう促すことで、持続的な成長を可能にします。コーチングについて詳しくはこちらの記事で解説しています。コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説(2) コンサルティングやカウンセリングとの違いコーチングと似た対人支援として、よく比較されるのがコンサルティングやカウンセリングです。それぞれ「人を支援する」という点ではコーチングと似ていますが、大きく異なる点があります。これらの違いを明確に把握することは、自分のニーズに合わせて適切な支援の手法を選択するために重要です。コンサルティング:専門的な知識や解決策を提供し、具体的な問題を解決するのが役割です。例えば、企業の経営課題や営業戦略、人事上の課題など、特定の分野における最適な答えを提示し、指示を与える形式が主となります。短期的な成果が求められる場合に有効な手段です。カウンセリング:過去の出来事や心理的な課題に焦点を当て、心のケアを行うものです。クライアントの抱える悩みや苦しみに寄り添い、感情の整理をサポートします。過去を深く掘り下げ、精神的な安定を図ることが目的です。コーチング:答えを与えずにクライアントの思考を整理し、行動変容を促す点が特徴です。コンサルティングやカウンセリングと異なり、「解決策を提供する」のではなく、「可能性を引き出す」ことに重点を置いています。現在から未来に向かって、クライアントが自ら目標を設定し、それを達成するための行動を見つけ出すプロセスをサポートします。他の対人支援スキルとの違いについて詳しくはこちらの記事で解説しています。コンサルティング、コーチング、カウンセリング、ティーチングの違いとは?プロコーチが徹底解説2. コーチに向いている人の特徴とはでは、具体的にどのような人がコーチに向いているのでしょうか。本章では、コーチに向いている人の特徴について解説します。(1) 聴き上手:本音を引き出す傾聴の力コーチングにおいて最も重要なスキルの一つが「聴く力」です。コーチはクライアントの話をただ聞くだけではなく、言葉の裏にある意図や感情を汲み取り、深く理解する必要があります。これは、単なるヒアリングではなく、相手に積極的に関わり、共感を示しながら本音を引き出す行為です。クライアントが本音を話しやすい環境を作るためには、相槌を打つ、適切なタイミングで要約する、共感を示すといったスキルが不可欠です。コーチが習得すべきスキルについては、次章で解説します。日頃から、「聞く」ではなく「聴く」が実践できる人は、コーチとして大きな強みをすでに持っているといえます。実際のところ、聴くことが苦手な人も案外と多いものです。相手の話に心を傾け、非言語的な情報にも注目できる能力は、信頼関係を構築し、クライアントの内側にある答えを引き出す上で、極めて有効な機能を果たします。(2) 自分の考えを相手に押し付けない:中立な立場で導く姿勢前述の通り、コーチの役割は、クライアントに答えを教える、与えることではなく、クライアント自身が考え、気づきを得るサポートをすることです。コーチ自身の考えや価値観を押し付けるアクションはコーチングとはいえません。もし、クライアントの言葉を受けて、「もっとこうしたらいいのに」とアドバイスをしたくなったり、「普通はこう考えるのに」と固定概念が浮かんで来たら、自分のその想い自体に気づいて、いったん手放す必要があります。自分のアドバイス心や固定概念からいかに離れられるか、これはコーチの力量を示すものでもあります。これは、コーチがクライアントの主体性を最大限に尊重する姿勢と密接に関係しています。クライアントは自分の課題に対する答えを必ず持っているという信念がなければ、一方的な指示や命令に陥る危険性が常にあります。相手の話を聞きながら、つい自分の意見をアドバイスしてしまったという経験も多くの人が持っているでしょう。もちろん、コンサルティングやティーチングなど、相手に指導する力が有効な関わりもあります。しかし、それはコーチングとしては機能しません。コーチは常に中立な立場を保ち、自分の考えを横に置いて、クライアントが自ら解決策を見つけ出すプロセスを信頼することが求められます。(3) 相手の感情に引きずられない:冷静さと共感のバランスコーチングでは、クライアントが悩みや迷いを抱えていることもあります。また、ネガティブな感情を強く表現する場面に直面することがあります。そんなときに、コーチがクライアントの強い感情に引きずられると、うまくいかないことがあります。つまり、クライアントの事情や喜怒哀楽に過度に同情したり、コーチ自身の内なる感情が表れてしまう可能性があり、こうなるとクライアントの課題から焦点がずれてしまいます。大切なのは、クライアントの感情に共感しつつも、必要以上に同調せず、冷静な視点を保ち、クライアントに焦点を当て続けることです。これは、非情であれということではありません。むしろ、どんな状態にあるクライアントも受け止められる懐の深さの表れです。コーチが落ち着いているからこそ、クライアントは自分の感情を出し、そして、次第に落ち着いて考えられるようになっていくのです。相手の感情に引きずられないためには、コーチが自分の感情が動くのはどんな時か、どのような場面にどんな感情が強く出るのかなどを理解している必要があります。だからこそ、コーチにとって自己理解はとても重要なプロセスなのです。自己理解を深めることで、自分の感情のパターンを把握し、それに振り回されることなく、客観的に状況を判断する能力が向上します。自己理解について詳しくはこちらの記事で解説しています。コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説(4) クライアントの可能性を信じることができる:信頼と希望を与える存在コーチングには三大原則があります。それは、①人の可能性は無限大である②クライアントは必ず答えを持っている③コーチとクライアントは対等なパートナーであるの3つです。クライアントの可能性を信じるというのは、①人の可能性は無限大であるを前提とした信念です。すべての人には限りない可能性がありますが、誰もが常にその可能性を発揮できるわけではありません。挑戦することに臆病になったり、自分はできないと思い込んでしまうことがあるものです。そんなときでも、コーチは、クライアントの可能性と、実現をいつも信じて帆走するのです。信頼関係が築かれた関係性の中で、クライアントは本来の可能性を花開かすことができるからです。実際、人の可能性を信じ切ることは簡単ではありません。そのつもりが無くても、無意識に相手の可能性を見積もってしまう、よくあることです。しかし、コーチングにおいては、相手に対するコーチの揺るぎない信頼が、クライアントの自信を育み、困難な状況でも前向きに取り組むモチベーションを与えるのです。(5) ポジティブな視点で物事を捉える能力コーチは、クライアントが抱える課題や問題を単なる障害として捉えるのではなく、成長の機会として捉える能力が求められます。ネガティブな状況の中にもポジティブな側面を見つけること、クライアントの視点を広げることで、視点の変化を促します。このポジティブさは、コーチが人の可能性を常に信じ続けるという基盤から生まれるものです。単なるリフレーミングにとどまらず、相手を信じ、ポジティブな未来を祝福する姿勢からクライアントが自ら解決策を見つけ出す力を高めていくのです。(6) 好奇心と探求心コーチは、クライアントの話に対して純粋な好奇心を持ち、もっと深く理解したいという探求心を抱く必要があります。「何がこの人のエネルギーの源なのだろうか」「他にどのような可能性があるのだろうか?」といった問いを常に持ち、クライアントの内面を掘り下げようとする姿勢が、より本質的な課題や目標を引き出すことにつながります。なお、この好奇心は単なる個人的な興味ではなく、クライアント自身に対する敬意や支援の気持ちから生まれている必要があります。コーチとしての健全な好奇心と探求心は、コーチの質問力を高め、セッションの質を向上させます。(7) 学ぶことへの意欲と向上心コーチングスキルは一度習得すれば終わりではありません。人の心や行動は複雑であり、時代の変化とともに新たな課題が生まれます。コーチは常に、自分自身のスキルや知識をアップデートし続ける必要があります。関連する書籍を読んだり、セミナーに参加したり、自分がコーチングを受ける経験を通して、継続的な学習と自己研鑽を行う意欲が不可欠です。向上心の高い人は、どんな状況からでも学びを得て、自分のコーチング能力を高めていくことができます。コーチングスキルは習得できるコーチに向いている人の特徴としてこれまで挙げてきた資質は、生まれ持ったものだけではなく、コーチングの学びを通じて身につけることができます。傾聴の技術や適切な質問の仕方、感情のコントロールの方法などは、実践とトレーニングを重ねることで習得可能です。コーチングを学ぶことで、相手の可能性を信じ、真にクライアントの成長を支援できるスキルを磨くことができます。コーチングを学ぶには、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジがおすすめです。コーチに必要不可欠な「傾聴力」「質問力」「自己理解」などはもちろん、コーチングのスキルとマインドを体系的に学ぶことができます。3. コーチとして習得すべき3つのスキルでは、コーチとして習得すべき3つのスキルとはなんでしょうか。それぞれ具体的に解説していきます。(1) 傾聴:言葉の奥にある真意を捉える力コーチングにおいて最も重要なスキルの一つが「傾聴」です。クライアントの話をただ聞くのではなく、言葉の裏にある意図や感情まで深く理解し、寄り添うことが求められます。単なるヒアリングとは異なり、相手の感情や背景にある価値観まで把握しようとする積極的な姿勢を指します。傾聴スキルには、ペーシング・姿勢・視線・表情・うなづき/相槌と細分化することができます。実は人のコミュニケーションは、言葉そのものが相手に与える影響はわずか7%といわれています。メラビアンの法則と呼ばれるもので、表情や見た目などが与える影響が55%、声の表情や大きさなどの聴覚が38%といわれています。コーチは、言葉だけでなく、表情や姿勢などを意図的にコントロールするスキルが必要です。クライアントが安心して話せる場を構築し、本音を引き出すためには、非言語的な情報を適切に使用する力が役に立つのです。傾聴について詳しくはこちらの記事で解説しています。質問の価値を高めるコーチングスキル傾聴とは?NG例もあわせて解説(2) 質問:思考を深め、視野を広げる問いの技法コーチングでは、クライアントの思考を引き出し、視野を広げるための質問スキルが欠かせません。適切な質問を投げかけることで、クライアントは自分の価値観や目標に気づき、主体的に考え、行動するきっかけを得ることができるからです。コーチの役割とは、答えを与えるのではなく、クライアントが自ら答えを見つけるための道筋を照らすことにあります。質問は、質問自体の種類を増やすことと、適切な場面で、適切な質問をすることが大切です。質問の種類というのは、例えば質問の角度によってわけることができます。「広げる質問」(例:他にどんな選択肢がありますか?)、「深める質問」(例:その感情の裏には何がありますか?)、「高める質問」(例:もし可能なら、どんな状態を目指しますか?)、「まとめる質問」(例:今日の話から、何が最も重要だと感じましたか?)などがその例です。これらの質問を使い分けることで、クライアントの思考を多角的に刺激し、新たな視点を提供します。適切な場面での質問というのは、コーチングのステージに応じた質問です。有名なコーチングの型として、GROWモデルと呼ばれるものがあります。これは、コーチングセッションの大きな流れを示したもので、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジでは、GROWモデルをさらに深めたGRROOWWモデルを開発、用いています。各ステージにあわせた質問を適切に問うことがとても大切です。例えば、「目標設定段階」では目標の明確化を丁寧に促す質問、「現状把握段階」では現状を詳細に確認する質問、「支障確認段階」では、本人の一歩を妨げているものを大切に聞き、また、「選択肢探索段階」では多様なアイデアを引き出す質問が求められます。質問について詳しくはこちらの記事で解説しています。【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト|避けるべき例も紹介(3) 承認:自己肯定感を高め、行動を促す力コーチングにおいて承認は、クライアントの自己肯定感を高め、前向きな行動を促すために重要なスキルです。相手の存在や行動、成果を認め、言葉で伝えることで、クライアントは過去の自分を認め、今の自分に自信を持ち、さらなる未来の挑戦へのモチベーションを得ます。承認には主に3つの対象があります。結果・行動・存在の3つです。結果に対する承認は、例えば「目標を達成した」などが該当します。結果をしっかりと承認することで、本人の達成感を認め、次の目標への意欲を高めます。行動に対する承認は、「目標を達成するためにとった行動」が対象になります。例えば、「クライアントを5件訪問した」などが当てはまります。結果がどうあれ、そのプロセスや努力を認めることで、行動の継続を促します。失敗した場合でも、行動を承認することで次への学びにつなげることができるのです。存在に対する承認とは、相手の存在そのものに対する承認です「あなたがチームにいてくれること」などが該当します。相手の存在自体を認め、尊重することで、深層の信頼関係を構築し、安心して自分を表現できる場を提供します。承認をするときは、相手の何を承認しているかを意識して使い分けることが重要です。単なる褒め言葉ではなく、相手の状況やニーズに合わせた適切な承認を行うことで、その効果は最大限に発揮されます。承認について詳しくはこちらの記事で解説しています。【コーチングの承認とは?】人の成長を促すスキルを3つの効果と注意点をあわせて紹介コーチングのスキルとしては、他にもバックトラッキングと要約、フィードバック力などがありますが、傾聴・質問・承認はまずは絶対に抑えたいスキルです。これらは、全て対話形式のコーチングの根幹をなすものであり、これらの習得がコーチとしての基本レベルを決定します。4.そしきにおけるコーチング導入のメリットと人材価値ここで、コーチングを企業に導入するメリットにもふれておきます。組織コーチングの導入は、社員のモチベーションを高め、主体性を引き出すことで、組織全体のパフォーマンスを向上させます。管理職がコーチングスキルを身につけることで、部下の自律的な成長を促し、人材育成制度をさらに充実させることが可能になります。今後、VUCAの時代において、企業は絶え間ない変化への適応が求められます。その中で、社員一人ひとりが問題解決能力を高め、自ら課題を見つけ、解決できる人材であることが成功の鍵となります。コーチングは、そのような人材を育成するための強力な手段であり、企業の組織開発を推進する上で不可欠な要素となるでしょう。営業部門の成績向上、リーダーシップ発揮の機会の増大、社員の定着率向上など、コーチングの導入によって得られる成果は多岐にわたります。人事の部門は、これらのメリットを把握し、自社に最適なコーチングプログラムを構築し、実施していく役割を担います。コーチングは、個人の成長と組織の発展を両立させる現代に必要なマネジメント手法であり、その価値は今後さらに高まっていくでしょう。すなわち、コーチに向いている人は、個人や組織を成長させる人材としての価値が高まっていきます。5. コーチに向いている人の特徴まとめ本記事では、コーチに向いている人の特徴とコーチとして習得すべきスキルについて解説してきました。コーチとして必要不可欠な傾聴・質問・承認のスキルを習得することは、クライアントの成長を支援できるだけでなく、自身のコミュニケーション力や自己理解も深まります。また、ビジネスや教育、スポーツ、家庭など、さまざまな場面で役立ちます。コーチングの学びは、単なる仕事のためだけでなく、個人の人生そのものを豊かにするものです。自分自身の感情を把握し、他人の感情にも共感できる能力は、あらゆる人間関係に良い影響を与えます。コーチングを本格的に学ぶなら、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジがおすすめです。当カレッジでは、ICF認定スクールでもあり、国際水準を満たしたカリキュラムを提供しています。コーチングセッションを行う上での倫理や原則、実践的な技法まで、体系的に学習できます。無料の説明会も提供されており、初めてコーチングを学ぶ方にも最適です。ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジで一生もののコーチングの学びを習得し、自分自身も周囲の人も高めていく存在となりましょう。無料説明会はこちらからお申込みいただけます。監修者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。最終更新日:2025年6月7日■関連記事・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をわかりやすくした保存版リスト |やってはいけない質問も紹介・【2025年】国際コーチング資格取得について:特徴や選び方をまとめて解説■人気記事・コーチングの効果的な勉強法は?学び方やおすすめのスクールの選び方について・【GROWモデルとは?】コーチングの質問の型とすぐに使える具体的な質問例もあわせて紹介・「コーチングを学ぶ最適な方法とは?コーチングの難しさと確実に学ぶ方法をプロコーチが解説:本格的に学びたい方向け