コーチングは、相手の可能性を引き出すスキルとして人気が高まっており、コーチングを学びたい人も増えています。コーチングを学ぶための方法はいくつかありますが、実際にどんな方法が自分に合っているのか、判断に悩むかもしれません。この記事では、コーチングを学びたい方のため、コーチングを学ぶ最適な方法、コーチングを学ぶ難しさ、そして、確実にコーチングを身に着けるための学習方法やスクールの選び方について、プロコーチが詳しく解説します。仕事でコーチングを活用したい方や、身近な人のためにコーチングの力を学びたい方にとって役立てば幸いです。1 コーチングとは何か?―ICF国際コーチング連盟の定義―コーチングは、コーチがクライアントに対して、質問やフィードバックなどさまざまなスキルを通じて目標達成や自己実現を支援するプロセスです。コーチングの国際認証団体であるICF国際コーチング連盟では、コーチングを次のように定義しています。クライアントの思考を刺激するさまざまなプロセスを通じて、クライアントの公私における可能性を最大化させる対等なパートナーシップを築くことこの定義にも表れているように、コーチングとは、クライアントに対して、既存の答えを提示したり、指示や命令することではありません。クライアントが本来持っている可能性を引き出して最大化するために関わることが、コーチングです。コーチングに関するさらに詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説2 コーチングを学ぶのが難しい理由人が本来持っている可能性を引き出す、と口にするのは簡単ですが、実際にやってみると難しいことが分かります。コーチングに興味をもって学び、自分でやってみたけれどもうまくいかなかった、という人も多いでしょう。コーチングが難しい理由には少なくとも二つあります。その一つは、コーチングと一般的なコミュニケーションの間に、大きな違いがあるということです。では、両者にはどんな違いがあるのか、それぞれの具体例から考えてみましょう。(1)一般的な関わり方他人を支援しようとするとき、多くの人は、自然と次のような方法をとっています。自分が学んだ知識や経験を相手に伝える自分が思いついた方法を相手に勧める自分が本人に代わって解決しようとするこれらは、日常的に行われている関わりです。それぞれの具体例を見てみましょう。【一般的な関わり方の具体例】例えば、「部長に言いたいことが言えなくて悩んでいるんです」と相手が発言したときの対応としては次のようなものがよく出てきます。『●●さんも部長とはうまくいかないって言っていたよ』『誰でも上司との関係には悩むものだ。とりあえずしっかり食べて寝るのが一番だよ。』これらは、自分が学んだ知識や経験を相手に伝えているコミュニケーションです。知識や自分の見解を相手に教えようとする点で、ティーチング的なコミュニケーションとも言えます。『まずは、部長に自分の気持ちを伝えてみたら?』『そこまで悩んでいるなら、転職も考えた方がいいんじゃない?』これらは、自分の思いついたアイデアを相手に提案して勧めるコミュニケーションです。指示的なアドバイスの表明ともいえ、コンサルティングに近いかかわりでしょう。なお、コーチングとコンサルティング、ティーチングの違いについては、こちらの記事をご覧ください。コンサルティング、コーチング、カウンセリング、ティーチングの違いとは?プロコーチが徹底解説『部長になんて伝えるか、私が考えてあげようか?』『なんなら、代わりに部長に言ってあげるよ。』『部長が怖がってる常務に、こっそり伝えておこうか?』これらは、本人に代わって、こちらが相手の課題を解決する行動をとろうとしていますね。相手を助けようとして,自分が解決に動こうとするパターンです。こうしたコミュニケーションが決して悪いわけではありません。むしろ一般的なコミュニケーションで、時には相手の役に立つことも大いにあるでしょう。ただ、いずれも、相手本人が自ら考えたり、主体的に解決に向かう方向には進んでいないことがわかります。場合によっては、本人の内側に存在する解決能力や主体性を下げる方向に進むかもしれません。一方、コーチングとは、本人が本来持っている可能性を引き出して、最大化することためのコミュニケーションメソッドです。つまり、私たちが自然と行っているコミュニケーションは、その多くが、コーチングとは真逆のかかわりともいえるのです。コーチングを習得するということは、こうした一般的な発言やコミュニケーションを手放して、コーチング的なコミュニケーションにごっそり変えていくことです。コーチング的コミュニケーションとは、先ほどの例で「部長に言いたいことが言えなくて悩んでいるんです」と相手が発言した後に、例えば言いたいことが言えないのは、何が支障になっているんだろう?言えなかったとき、どんな気持ちになりますか?そのことで、具体的に困っているのはどんなこと?いつぐらいからそう感じてきた?仮に部長が、それを喜んで聴いて受け入れてくれるとしたら、何を伝えますか?言いたいことがすべて伝えられたとしたら、今とは何が違ってきますか?などが考えられます。いずれも、コーチ側の意見やアドバイスを伝えるのではなく、あくまで、本人が自分で考えて、自分の思考や行動について気づきが得られるような問いを立てています。このように、コミュニケーションを逆の方向に変えることは、決して簡単ではありません。なぜなら、人は、自分の発言やコミュニケーションを、それほど意識せずに行っているからです。意識せずに行っているコミュニケーションを変えていくのは、なかなか難しいことです。(2)コーチング的な質問やコミュニケーションを瞬時に選ぶ難しさコーチングが難しいとされる理由はもう一つあります。それは、コーチングはリアルな会話の中で行われるため、コーチ側は、クライアントの発言を受けて、その場ですぐにコーチング的な言葉を選ぶ必要があるという点です。つまり、コミュニケーションを変えようと意識できたとしても、どのように変えたら良いのか、その選択は簡単ではありません。どんどん進むリアルな会話の中で、コーチは瞬時に、コーチングに適した質問を選んで進めいかなければいけません。この瞬時の選択ができなければコーチングは止まってしまいますし、コーチ側が焦ってしまった結果、普段のコミュニケーションに戻って、相手に自分の学びをアドバイスとして提供したりしてしまいます。これではコーチングはうまくいきません。(3)コーチングの難しさを乗り越えるにはこのように、コーチングを習得するのは簡単ではなく、一朝一夕ですべてが身に着くものでもありません。一方で、コーチングはひとつのコミュニケーションメソッドですから、言語と同じように、しっかりと基本から学んでいけば、確実に上達します。つまり、コーチングの難しさを乗り越えるべく本格的にコーチングを学べば、質の高いコーチングを身に着けることは可能なのです。3 コーチングがしっかりできるとは?(1)コーチングスキルが十分に使える質の高いコーチングができるということは、普段のコミュニケーションを手放して、相手の思考が柔軟に動くような関わりができるになることを指します。そのためには、質の高い質問を行ったり、承認やバックトラックなどのコーチングスキルを学び、十分に使いこなせる必要があります。(2)コーチングマインドを体現しているスキルはとても重要ですが、実は、コーチングスキルだけではコーチングを習得したとは言えません。コーチングは、相手の可能性を信じ、それを最大化する対等な関係性です。そこには、コーチング特有のマインドが不可欠であり、すべてのスキル学習の前提となっているのです。コーチングマインドはさまざまありますが、例えば、次のようなものが挙げられます。なお、コーチングの国際的権威団体であるICF国際コーチング連盟では、プロフェッショナルコーチに求められるコーチの水準としてコアコンピテンシーが定めています。くわしくはコアコンピテンシーについてのICFジャパンのページも、ぜひ合わせてご覧ください。他者の存在に敬意をもって向き合う相手の可能性を心から信頼する相手の言葉だけでなく全体性を受け止める相手の過去や未来の幸せを願う相手の決断や未来に向けたチャレンジを祝福するコーチ自身が自分をよく見せようなどと思わず、等身大で相手と向き合うジャッジや偏見を捨て何事にもニュートラルであろうとする多様性を大切にするスキルは、マインドを体現するために存在しています。コーチングができる状態とは、こうしたコーチングマインドを体現するコーチングスキルを、クライアントのために使える状態になることでもあります。(3)十分な自己理解が学びの基礎になるコーチングを習得すると、相手に対するジャッジを手放して、純粋に相手の成長や幸せを願うかかわりができるようになります。そのためには、相手に関わる前に、自分自身の価値観をよく理解しておく必要があります。なぜなら、人は誰でも、自分の価値観を通して物事を見ているからです。もちろん、価値観に正しい・間違いの分類はなく、また、自分の価値観を完全に消し去った状態で人に向き合うことはできません。ただ、そのことに気が付かずに相手の話を聴いていると、無意識に相手に自分の価値観を押し付けてしまいます。その結果、この人の考えは間違っているこうすればいいのに正しい行動を教えてあげなければといった考えになりがちです。これでは、コーチングマインドの体現とは言えません。したがって、コーチングの学びでは、まずは自分を理解し、自分の価値観を客観視できること、それを手放せる状態を知る必要があります。なお、このように、自分の価値観にとらわれた状態を手放せることは、コーチングに限らず、普段のコミュニケーションや対話でも大いに役立ちます。人はそれぞれ異なる考えを持っており、それをいったん受け止めて違いを大切にすることから、対話や協調的な新しい関係が生まれるからです。4 コーチングを本格的に学ぶにはコーチングを身に着けるとは、普段のコミュニケーションパターンを一度手放し、コーチングという、新しいコミュニケーションスタイルを自分の中にしっかりと確立させることです。そのためには、コーチングスキルとマインド、そして自己理解の過程などが欠かせません。そのため、コーチングをしっかり習得したいならば、本格的にコーチングを学ぶ必要があります。その点を踏まえて、コーチングを本格的に学ぶ方法を整理します。(1)本で学んでみる・本で学ぶメリットコーチングを学ぶためには、気軽に手に取れる本を読んでみる方法もあります。最近は、コーチングに関する書籍もたくさん出ていますので、自分の好みに合った本を独学で読んでみるのも良いでしょう。費用があまりかからない点や、学びの手軽さは、本の大きなメリットです。最初の一歩としては大いにお勧めできます。コーチングに関するおすすめの書籍は、こちらの記事をご覧ください。ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは(2)短時間のコーチングセミナーで学ぶコーチングに関する短時間のセミナーに出てみることも、コーチングを学ぶ方法の一つです。・短時間のコーチングセミナーで学ぶメリット短時間のセミナーでは、コーチングを専門とする講師から学べる点が大きなメリットでしょう。また、セミナーでは、本では得られないリアルな体験ができる可能性があり、これもメリットのひとつです。なぜなら、コーチングは人と人とのコミュニケーションで成り立っているので、実際に講師から学び、リアルな体験を得ることはコーチングの学びに不可欠だからです。こうした体験を短時間で得られる手軽さは、短時間セミナーの大きなメリットです。・本や短時間セミナーで学ぶデメリット一方、本格的にコーチングを学びたい方には、本や短時間の単発セミナーでは物足りなく感じるでしょう。なぜなら、コーチングを学ぶのは簡単ではなく、そのためには、スキルやマインドの習得、十分な自己理解など、通るべき過程がたくさんあるからです。単発セミナーでは、こうした過程を十分に踏むことは難しく、本や短時間セミナーの学びの手軽さは、本格的に学びたい人にとってはかえってデメリットとなるでしょう。 また、本や単発セミナーでは、受講生同志でしっくりと切磋琢磨しながら学ぶことができません。コーチングの学びは、自分のこれまでのコミュニケーションを振り返って、新しいコーチングというスタイルを取り入れることです。コミュニケーションとは、他者とのかかわりそのものですから、これを自分一人で学ぶとなると、どうしても限界があります。また、自分を理解する学びでは、自分以外の人の価値観にも触れてじっくりと向き合う体験が不可欠です。コーチングをしっかり習得したいならば、本や短時間セミナーだけでは、本格的な学びの効果は得られない可能性が高いです。(3) コーチングスクールで学ぶコーチングに不可欠な、スキル、マインド、そして自己理解の過程をしっかり踏むならば、コーチングスクールで通う方法が適しています。・コーチングスクールでコーチングを学ぶメリットスクールでは、スキルの説明や理論とワーク練習も組み込まれており、実践的な学びが得られます。また、講師や受講生から直接フィードバックをもらうことで、自分のコミュニケーションパターンに気が付き、コーチング力を高めていけるようになっています。さらに、コーチングマインドの習得や自己理解は、共同の学びの場を通じて発見していくものです。つまり、参加型学習でしか得られない面がコーチングでは不可欠なので、多くのコーチングスクールでは、コーチングの資格取得のサポートやキャリア構築のアドバイスを提供しています。プロを目指すにあたって強力なサポートを得られるのも、スクールにしかない魅力です。・コーチングスクールでコーチングを学ぶデメリットコーチングスクールで学ぶことのデメリットも理解しておきましょう。スクールに通うとなると、時間がとられます。特にコーチング学習をしっかり提供するスクールならば、数か月単位で講座が組まれている場合が一般的です。また1回あたりの講座時間数も、数時間から1日に及ぶ場合も多いものです。自分の時間を確保できなければ学習が進まない点が、スクールのデメリットと言えるでしょう。5 コーチングスクールで学ぶ学習内容コーチングを本格的に学んで身に着けたい内容には次のようなものがあります。(1)傾聴力傾聴とは、単に相手の話を聞くだけでなく、自分の価値観や判断を手放し、純粋な心で相手の言葉に耳を傾けることです。たとえば、相手の考えや感情を否定しない何事もいったん受け止めるこうしたらいいのになど聞き手の意見を持ちださない聴いていることが伝わるように相手に、うなずきや表情などで傾聴を示すことも傾聴の具体的な例です。相手の意見や感情をそのまま受容し、相手が安心して自己表現できるような関わり方ともいえます。こうしたかかわりが常にできることで、クライアントとの深い信頼関係の構築にもつながります。(2)承認力承認とは、相手の努力や成長に気が付いてその価値を大切に扱う行為です。承認することによって、相手には、自分の成長や行動、そして、存在自体の価値を感じてもらうことができます。相手の話を聴くだけでなく、相手の成果や取り組みをしっかり承認する力もコーチングでは求められます。(3)フィードバック力コーチングでいうフィードバックとは、コーチの目に映るクライアントの状態を、相手に戻すように伝えることです。コーチングでフィードバックが重要な理由は、コーチングが相手の成長を支援するプロセスだという点にあります。人が成長するには、現時点で自分がどんな状況にあるのか客観的に知る必要があります。ところが、人は、誰しも、直接、自分を見ることができません。自分を知るには、必ず他者の力を借りる必要があるのです。そのために役立つのがコーチのフィードバックです。この意味で、コーチとは鏡のような役目を持っているとも言えます。この鏡がゆがんでいたり、曇っていると、適切なフィードバックができません。コーチにとってフィードバック力は、クライアントを支援するための重要な力で、本格的な学びには欠かせない重要な要素です。(4) 質問力質問は、さまざまなスキルの中心にあるといっても過言ではないでしょう。なぜなら、人は質問されるとそれについて反射的に考えるものです。したがって、コーチの質問はクライアントの思考の流れを作っていく作用があります。これは、質問が相手に与える影響はとても大きい、セッションの全体の流れを決するほどのパワーがあることを意味します。コーチングの質問は、次のような問いが有益とされています。クライアントの思考を広げ、深める問いクライアントが話したいことに焦点を当てる問いクライアントが自ら気づきを得られるような問いクライアントの視点がより多角的になるような問いクライアントがこれまで考えたことがなかったような問いクライアントが自分の内側の感情を言語化できるような問いクライアントが本当に欲しているものにたどりつくような問いクライアントが自分を変化させる行動に結び付く問いこうした質問を、実際のコーチングの場で繰り出していくのは簡単ではありません。しかし、しっかり学べば必ず身に着いてきます。傾聴、承認ができたうえで、さらに高い質問力が得られれば、それに比例してコーチングの力も高まっていきます。なお、コーチングの質問には様々なバリエーションがあります。質問についてはこちらの記事をご覧ください。【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト |避けるべき例も紹介(5) 自己理解の基盤を整えるコーチは、クライアントの鏡のような存在でもあります。つまり、自分を理解しないままコーチングをしてしまうと、ついつい自分の価値観で相手をジャッジしたり、適切なフィードバックができなくなる可能性があります。こうした状態では良いコーチングはできないものです。そのため、自分自身を理解する力、自己理解の基盤を整えることはコーチング学習には欠かせないものであり、コーチとしての自分を底支えしてくれる重要な要素です。コーチングを本格的に学ぶなら、自己理解についてもしっかり向き合える講座を探すと良いでしょう。6 コーチングスクールを選ぶときのポイントコーチングを本格的にスクールで学ぶためには、自分に合ったコーチングスクールを選ぶことが重要です。ここでは、スクールを選ぶ際に押さえておきたい7つのポイントを紹介します。(1)学ぶ目的に合っているかコーチングを学ぶ目的は人それぞれです。ビジネスコーチングに特化したい人や、個人的な成長を目指したい人、ウェルビーイングを目指す支援をしたい人など、目指す方向によって、自分に合ったスクールやプログラムも異なります。また、スクールによって講座のカリキュラムも異なります。コーチングのスキルやマインドに特化しているところもあれば、リーダーシップを中心とするところ、マインドフルネスを重視するところ、心理学や組織論などアカデミックなアプローチを取り入れてコーチングをさらに深めるところなど、さまざまです。つまり、スクールによって、採用している講座内容には違いがあるのです。自分の目的に合ったスクールを選ぶことで、充実感を得ながら、確実にコーチング学習を進めることができます。(2)どんな資格が得られるかコーチングを本格的に学ぶのであれは、資格も視野に入れたいところです。もちろん、資格がすべてではありませんが、せっかく本格的に学ぶのであれば、学びを得たことの証明や、学びを実力として積み上げたことの証として、資格があればさらによいでしょう。また、資格のための試験を受けることで、コーチングを学ぶモチベーションが上がります。各スクールによって、取得できる資格は異なっています。また、資格を取るための過程や、資格を維持する条件も様々です。スクールを選ぶ際には、どんな資格が取れるのか、また、資格取得や維持の条件も含めて、事前に確認するといいでしょう。(3)ICF国際コーチング連盟認定スクールかどうかICF国際コーチング連盟(ICF)は、1995年にアメリカで設立されたコーチング業界で最大の非営利団体です。ICFが認定するコーチ資格は世界中で信頼されており、コーチングについて質の高いスキルを持っていることを証明するものです。コーチングに関するいろいろな資格の中で、現在もっとも信頼できるものといっても過言ではないでしょう。ICFの資格を取るには、一定の学習時間に加えて、コーチング実践やメンターコーチング、そして、コーチングセッションの試験の合格実績など、さまざまな過程をすべてクリアする必要があります。その意味でもICFのコーチ資格は、信頼できるコーチとしての証とも言えるでしょう。ICF認定スクールでは、ICFの基準に合った、質の高いカリキュラムが提供されており、コーチとしてのスキルやマインドを習得することができます。本格的にコーチングを学ぶのであれば、ICF認定スクールかどうかを一つの基準として考えてみるといいでしょう。なお、 ICF認定コーチング資格には、以下のような種類があります。- *ACC (Associated Certified Coach):* 経験豊富なコーチのための資格で、受講には60時間以上の専門トレーニングと100時間のセッション経験が必要です。- *PCC (Professional Certified Coach):* 国際的に認められた実績豊富なコーチのための資格で、125時間以上のトレーニングと500時間のセッション経験が求められます。- *MCC (Master Certified Coach):* ベテランのプロコーチのための資格で、200時間以上のトレーニングと2,500時間のセッション経験が必要です。いずれも、国際的なコーチ資格として認められていますので、クライアントからの信頼も高まり、自分も誇りをもってコーチとして名乗ることができます。こうした資格を取得できるコーチングスクールかどうかは、スクール選びの一つの基準となるでしょう。(4)受講方法コーチングスクールには、オフラインとオンラインの受講形式があります。オフラインの対面受講では、他の受講者との交流が深まりやすく、実践的なスキルを身につけやすいという利点があります。一方、オンライン受講は、時間や場所に縛られずに学べるという利点があります。また、最近では、オンラインスクールも受講生同志の交流がしやすいようにコミュニティをつくるなどの工夫があるところが増えています。また、参加した講義が後日、動画で視聴できるかどうかも大きな違いです。オンラインかオフラインか講座以外に動画で学べるものもあるか講座が終わった後も、学習動画を見られるか受講生同志の交流はできるか質問や資格取得の支援体制は整っているかオンラインの場合、オフラインで交流する機会はあるか正式な講座以外に、互いを支援し合う場はあるかコーチングを練習し合える仕組みがあるか修了条件はどうか上記のような点が、スクールによって異なっていますので、自分の希望するスタイルに合ったスクールや受講方法を選びましょう。(5)受講料コーチングスクールの料金もさまざまです。受講コースの内容や資格取得に必要な時間によっても料金が異なります。また、支払方法もスクールによって異なっています。分割払いを希望する場合は分割が可能か、手数料はかかるかといった点も重要です。複数のスクールを比較して、自分の希望に合った条件を探し、わからない点があったら質問してみることもお勧めします。(6)価値観があっているかコーチングは、人の可能性を無限だと信じて、最大化する過程ですから、人を信頼する、敬意をもって接する、といった基本的な価値感はどのスクールでも共通しているはずです。一方で、そのスクール独自の価値観やミッションはスクールによって異なっています。その意味で、スクール選びでは、スクールの価値観と自分の価値観が合致しているかどうか、スクール自体が持っている価値観に共鳴できるかどうかは意外と大事なところです。スクールに通うとなると、一定期間にわたって、スキルだけでなくマインドも習得していくことになります。そこで提供される講座カリキュラムも、講師や受講生同志の交流も、すべてはスクールのミッションが反映されたものです。このミッションや価値観に共鳴できないと、次第に違和感やズレを感じてしまうかもしれません。スクールを決める際には、自分がコーチングを学びたいと思った原点に立ち返り、自分自身の価値感とスクールミッションが合うかどうか、ぜひ確認してみてください。(7)スクールの雰囲気が合うかスクールの雰囲気も重要です。スクールの場が持っている雰囲気やコーチの受講生への教え方や受講者同士の交流のしやすさは、どうしても学びの質に影響します。スクールによって、受講生の年代や職種の傾向などで特徴があります。例えば、20代が多いスクールもあれば、豊富な人生経験や高い専門性を持った人が多いスクールなど、さまざまです。講師が持っている雰囲気も講座には影響しますから、事前にスクールの雰囲気を確認し、自分に合った場所を選ぶことをお勧めします。7 コーチングとウェルビーイングの価値最近、ウェルビーイングの重要性がますます認識されています。ウェルビーイングとは、心身共に良い状態であることを指します。コーチングを学ぶ際に、このウェルビーイングの視点を取り入れると、クライアントの全体的な幸福感を向上させるかかわり方を学ぶことができます。例えば、クライアントが、目の前の目標達成だけでなく、仕事や人生における幸福度を高めたい場合、ウェルビーイングを軸としたコーチングは大いに役立ちます。なお、ウェルビーイングは人生だけでなく、経営にも取り入れられる重要な概念ですから、これからのコーチングには、ウェルビーイング観点は必須になってくるでしょう。コーチングを本格的に学びたい方は、ぜひウェルビーイングの知見も合わせて習得することをお勧めします。ウェルビーイングとコーチングについては、ウェルビーイングコーチングプログラムについてのページで詳しく説明しています。ウェルビーイング経営について詳しく知りたい方は、こちらのコラムシリーズウェルビーイング経営入門もお勧めです。8 まとめ:コーチングを本格的に学ぶにはスクール選びが大事本記事では、コーチングをしっかり学びたい方に向けて、コーチングとは何か、その難しさと習得のための最適な方法、スクールの選び方をお伝えしました。コーチングは簡単ではありませんが、しっかりと学べば質の高いコーチングができるようになります。コーチングを身に着ければ、人生のさまざまな場面で役立てることができます。なお、ウェルビーイングを軸としたコーチングなら、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジのプログラムもお勧めです。ICF国際コーチング連盟認定スクールとして充実したカリキュラムを提供しています。また、ウェルビーイングに重点を置いている点、組織論や心理学的なアプローチなど、アカデミックな学びが含まれる講座が特徴で、本格的にコーチングを学ぶ意欲のある方向けに、質の高いプログラムを提供しています。最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事が、本格的にコーチングを学びたい方のために役立つこと、自分に合ったコーチングスクールを選びに役立つことを願っています。著者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。最終更新 2025年2月11日■関連記事・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・コンサルティング、コーチング、カウンセリング、ティーチングの違いとは?プロコーチが徹底解説・ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは・質問の価値を高めるコーチングスキル傾聴とは?NG例もあわせて徹底解説・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト 避けるべきも紹介・コーチングの効果的な勉強法は?学び方やおすすめのスクールの選び方について■人気記事・【GROWモデルとは?】コーチングの質問の型とすぐに使える具体的な質問例もあわせて紹介・【コーチングの承認とは?】人の成長を促すスキルを3つの効果と注意点をあわせて紹介・コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説