コーチングを進める中で、「話が広がりすぎてまとまらない」「コーチが何を質問していいかわからなくなってしまう」といった経験はありませんか?これは「コーチ迷子現象」とも言える状態で、多くのコーチが直面します。実は、この現象はセッションのテーマ設定に大きく関係しています。今回は、セッションをスムーズに進め、クライアントの気づきや成長を最大限に引き出すためのテーマ設定のポイントを紹介します。1. テーマ設定の5つのポイントコーチングのテーマ設定で重要なポイントは下記の5つです。この5つのポイントを押さえれば、コーチングセッションを実際に始めるにあたってのテーマが適切な形でまとまるはずです。今日のテーマを確認するテーマの具体性を高める今日のセッションのゴールを確認するテーマについてクライアントに明確な合意をとるテーマの意義や重要性を確認する具体的に一つずつのポイントについて解説していきます。なお、コーチングの意義や流れについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説2. 今日のテーマを確認するまず、第一にすることは、今日のセッションテーマを聞くことです。当然ですが、コーチングセッションには必ずテーマが必要です。クライアントが「今日はどんな話をしたいのか」を明確にすることが、ファーストステップです。具体的には、以下のような質問です。「今日話したいテーマはどんなことですか?」「今日はなにをお話されますか?」このような質問を問いかけると、クライアントは今日話したいことを話すはずです。そこで、次のステップに移りましょう。3. テーマの具体性を高めるクライアントが話したいことを話した後にすることは、テーマの具体化です。コーチングセッションでは、テーマをできるだけ具体的に設定することが重要です。テーマが漠然としていると、セッションの方向性が定まりにくく、クライアントの気づきや行動につながりにくくなります。コーチが、セッション中に迷子になる要因の一つが、この具体化が不十分であったことに起因する場合が多いです。テーマが抽象的であると、その後のコーチングが終始、抽象的になってしまい、「あれ、なにを話しているんだっけ?」と混乱してしまうのです。この時点で具体化をしなければならない理由は、最初にクライアントが話したテーマが、抽象的であることがほとんどです。例えば、「職場の人間関係がうまくいかない」というテーマは、まだとても抽象的です。そこで、次のような質問で具体化を促します。「といいますと?」「もう少し詳しく教えてもらえますか?」すると、「部下への指導方法に悩んでいて、フィードバックをうまくできるようになりたい」などの話がでてくるかもしれません。このように、テーマが具体化すると、セッションの方向性が明確になり、コーチもクライアントも、このセッションでなにを話すのか、が明確になります。4. 今日のセッションのゴールを確認するテーマが決まったら、そのセッションで達成したいゴールを明確にすることが重要です。ゴールが不明確だと、話が広がりすぎて結論が出ず、具体的な行動につながりにくくなります。具体的には下記のような質問をしましょう。「このセッションが終わった時にどのような状態になっていたいですか」「どうなっていたら,セッションが成功したと言えるでしょうか」例えば、テーマが「部下への指導方法に悩んでいて、フィードバックをうまくできるようになりたい」だとします。このテーマに対して、セッションのゴールについて質問すると、「具体的に使えるフィードバックをまとめたい」かもしれませんし、「どのような時にフィードバックをするか決めたい」かもしれません。コーチは、クライアントがセッションを通して考えるゴールを、出せるように支援しましょう。なお、テーマを決める上で、重要な視点は、コーチが勝手に推測して決めてはいけないということです。このテーマなら、ゴールはこうだろう、と推察することはNGです。テーマと同じく、ゴールも決めるのはクライアントなので、必ずクライアントにゴールを聞きましょう。5. テーマについてクライアントに明確な合意をとるクライアントがゴールを出したら、改めて、テーマとゴールについて、明確な合意をとることが重要です。クライアントが発話したから、合意をとらずに進めてもいいだろうと思うかもしれませんが、改めて言葉にして合意をとるプロセスが重要です。「今日のテーマは〇〇でいいですか」と質問しましょう。この問いと、クライアントからの合意をもって、テーマがいわゆるピン留めされたことになります。ピン留めされたテーマに沿って、ここからのセッションが一貫して展開されることになります。6. テーマの意義や重要性を確認する最後に、テーマの重要性についても、聞いてみましょう。テーマの意義や重要性について問うことは、ICF国際コーチング連盟が推奨しているパターンでもあり、有効です。クライアントが、数多ある事象の中から、挙げたテーマには、たとえそれが一見些細なことであっても、必ず何らかの大切な価値観が反映されています。しかし、そのことにクライアントが気づいていないときもあります。そこでコーチの出番です。具体的には、下記のような質問です。「そのテーマを選んだのは,ご自身にとってどのような意味があるのでしょうか」この質問により、クライアントは、テーマについて、別の角度から思考を巡らせた上で、セッションに臨むことができます。なお、この重要性について問う質問は、4番目のテーマのピン止めの前でも後でもどちらもかまいません。また、場合によっては、想いを話したことで、やっぱりさっき決めたテーマと違うことを話したい、となることもあります。それでもまったく問題ありません。改めてテーマのピン止めをして、セッションを進めましょう。7. テーマ設定のポイントまとめ本ブログで解説した5つのポイントを意識して、テーマ設定を行ってみましょう。テーマ設定を明確にすることで、クライアントとのコミュニケーションがより深まり、セッションの効果を最大限に引き出すことができます。コーチングを学び、より実践的なスキルを身につけたい方には、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジがおすすめです。ラッセルは、「ウェルビーイング」を冠する日本で唯一のICF認定コーチングプログラムを提供しています。コーチングのマインドとスキルをバランスよく、アカデミックに学びたい方に特におすすめです。監修者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PPCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。最終更新 2025年3月7日■関連記事・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・コーチングを学ぶ最適の方法は?自分にあう学習法やスクールの選び方を紹介・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト|避けるべき例も紹介■人気記事・ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは・コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説・ICFコーチング資格の難易度比較|ACC・PCC・MCCの取得要件と実践のポイント・ウェルビーイングコーチングとは:意味や資格について徹底解説