近年、ビジネスやキャリア支援の現場だけでなく、日常生活の中でも「コーチング」や「カウンセリング」という言葉を耳にする機会が増えてきました。どちらも人を支援する方法として注目されていますが、その目的やアプローチは大きく異なります。たとえば、キャリアをどう築いていきたいかを整理したいという人にはコーチングが効果的な場合があります。一方で、心の不調や過去の出来事に苦しんでいるという人に必要なのはカウンセリングかもしれません。ところが、両者の違いがあいまいなままなんとなく選んでしまうと、本来得られるはずの効果が十分に得られなかったり、逆に不安やストレスを大きくしてしまうリスクさえあります。この記事では、「コーチングとカウンセリングの違い」をわかりやすく整理し、それぞれの特徴やメリットを比較しながら、どんな人にどちらが向いているのかを解説していきます。最後には、ラッセルで学べるコーチングの強みについても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。1. コーチングとは?コーチングとは、相手が自分自身の中に持っている答えや可能性を引き出すためのコミュニケーション手法です。特徴は、コーチが知識や解決策を与えるのではなく、問いかけや対話を通じて相手が自分で気づき、行動に移せるよう支援する点にあります。例えば、部下が営業で成果を出せず悩んでいる場合、コーチングでは「なぜできないのか」をコーチが判断するのではなく、「どんな工夫をすれば成果に近づけると思うか」といった問いを投げかけます。その結果、本人が自分なりの方法を導き出し、主体的に行動する力を育てることができます。コーチングは、目標達成やキャリア形成、リーダーシップ開発など、未来志向で具体的な行動を促したい場面に適しています。組織に導入されることも多く、社員の自主性やモチベーションを高める手段としても注目されています。2. カウンセリングとは?カウンセリングは、心の悩みや心理的な課題を抱える人が、その苦しみを和らげたり解決に向かったりするための支援方法です。カウンセラーは相手の話を丁寧に聴き取り、安心できる環境を整えることで、本人が抱えている感情や思考を整理しやすくします。特徴的なのは、過去の出来事や心の奥にある原因に焦点をあてる点です。たとえば、職場での人間関係の問題や家庭内でのストレスなど、感情的に負担を抱えている人に対して、カウンセリングでは「なぜそう感じるのか」を深掘りし、自己理解や感情の受容を促します。カウンセリングは精神的な健康の回復や維持に役立ちます。そのため、心理的な不調を抱えている人や、過去の出来事に強く影響を受けている人にとって有効なアプローチです。企業の人事制度の一環として導入される場合もあり、メンタルヘルスケアの重要な手段の一つとなっています。3. コーチングとカウンセリングの違いとは3.1 目的の違いコーチングとカウンセリングは、どちらも人の成長や回復を支援する手法ですが、その目的には大きな違いがあります。コーチングは未来に焦点を当てています。クライアントが達成したい目標や実現したい理想像を明確にし、そのために必要な行動を見つけていくのが中心です。例えば、リーダーとしてチームをもっとまとめたい、キャリアチェンジを成功させたい、パフォーマンスを高めたいといった具体的なテーマに対して効果を発揮します。一方で、カウンセリングは心の状態を回復させることに重きが置かれています。悩みや不安、ストレスといった心理的な負担を軽くし、心の安定を取り戻すことが目的です。そのため、過去の出来事や現在の感情に丁寧に向き合うプロセスが必要になります。3.2 対象者の違い対象者も両者で異なります。コーチングは、基本的に心理的に健康で、これからさらに可能性を広げたいと考えている人を対象としています。例えば、もっと自分の強みを活かしたい、より良い成果を出したい、行動を変化させたいといった意欲を持つ人が当てはまります。カウンセリングの場合は、心に傷を抱えていたり、強い不安やストレスで生活に支障を感じている人が対象です。抑うつ感、職場や家庭での人間関係のストレス、不眠など、心理的な課題に直面している人が安心して相談できる場所として機能します。3.3 進め方の違い進め方にも違いがはっきりと表れます。コーチングは、問いかけを通じてクライアント自身が答えを見つけていくプロセスを重視します。コーチは答えを与えるのではなく、適切な質問を投げかけ、相手の思考や感情を整理し、内側から気づきを引き出します。そのため、主体的に考え、行動に移す姿勢が求められます。一方、カウンセリングは、安心して話せる場を提供することが基本です。カウンセラーは寄り添いながらクライアントの感情や体験を受け止め、過去の出来事を整理したり、トラウマを癒したりすることを支援します。必要に応じてアドバイスや心理療法を取り入れることもあり、感情のケアに重点が置かれます。4. コーチングとカウンセリングの共通点とは4.1 対話を通じた支援コーチングもカウンセリングも、中心にあるのは対話です。相手の話を丁寧に聞き取り、言葉の奥にある本音や感情を引き出していくプロセスが共通しています。話すことで思考や感情が整理され、新しい気づきを得られるという点はどちらのアプローチにも見られる特徴です。4.2 安心できる関係性の構築両者とも、クライアントが安心して話せる環境をつくることを大切にしています。信頼関係がなければ、本音や深い悩みを共有することは難しくなります。そのため、傾聴や共感といったコミュニケーションスキルを通じて、安心感のある関係を築くことが重視されます。4.3 自己理解の促進コーチングでは未来の目標に向けて、カウンセリングでは過去や現在の感情に焦点を当てますが、いずれも共通しているのは「自己理解を深めること」です。自分自身の価値観や考え方に気づくことは、行動を選択するうえで欠かせないプロセスです。4.4 成長や変化をサポートする役割最終的に目指すのは、クライアントがより良い方向に進むことです。コーチングは目標達成や能力開発、カウンセリングは心の安定や問題解決をサポートしますが、いずれも相手の成長や変化を後押しする点で一致しています。5. ラッセルの学びにおける心理学の活用ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジでは、単なるスキル伝達にとどまらず、心理学の知見を多様に取り入れた学びを提供しています。コーチングは相手の思考や感情に深く関わる実践であるため、心理学的な理解は非常に重要です。ラッセルでは、ポジティブ心理学、発達心理学、認知行動理論などを取り入れ、受講生がより実践的にクライアントを理解できるようにしています。心理学を基盤に据えることで、受講生は単なるテクニックに頼らず、相手の背景や心の状態を丁寧に把握する力を養えます。例えば、目標に向かって行動を支援する際に、相手のモチベーションの源泉や行動を阻む心理的要因を理解できれば、より効果的なアプローチが可能となります。6. まとめコーチングとカウンセリングは、ともに対話を通じて人を支援するアプローチですが、その目的や方法は異なります。コーチングは未来志向で目標達成をサポートし、カウンセリングは過去や現在の悩みを整理しながら心の安定を回復していきます。どちらも人の可能性を引き出す大切なプロセスであり、共通点として「相手の主体性を尊重する」「安心できる信頼関係を築く」といった姿勢が重要です。ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジでは、この両者の理解を深めつつ、心理学を土台とした独自の学びを提供しています。心理学を多面的に取り入れたカリキュラムにより、受講生は実践的なスキルを身につけ、相手に寄り添いながらも主体性を引き出せるコーチへと成長できます。コーチングとカウンセリングの違いを理解することは、人材育成やキャリア形成だけでなく、日常の人間関係や自己理解にも役立ちます。これから学びを検討している方は、自分の目的に合ったアプローチを選び、実践につなげることが大切です。最終更新日:2025年9月15日著者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。インタビュー記事はプレジデント、ライフシフト、産経新聞など多数。■関連記事・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・コーチングの効果的な勉強法は?学び方やおすすめのスクールの選び方について・コーチングを学ぶ最適の方法は?自分にあう学習法やスクールの選び方を紹介・質問の価値を高めるコーチングスキル傾聴とは?NG例もあわせて徹底解説・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト 避けるべきも紹介・ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは■人気記事・【GROWモデルとは?】コーチングの質問の型とすぐに使える具体的な質問例もあわせて紹介・【コーチングの承認とは?】人の成長を促すスキルを3つの効果と注意点をあわせて紹介・コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説