コーチングは、相手自身が持っている答えを引き出し、行動を促すためのコミュニケーション技術です。しかし、コーチングを学んでいないと、無意識のうちに一方的な指示や否定的な言葉で相手とのコミュニケーションがうまくいかないことがあります。では、コーチングスキルを学ぶことで、どのようにコミュニケーションが変わるのでしょうか? このブログでは、コーチングを活用したコミュニケーションのポイントと、そのメリットについて紹介します。1. コーチングとは?コーチングとは、相手自身の持つ答えを引き出して、行動促進を支援するコミュニケーション手法です。コーチングの目的は、相手の主体性を高め、自発的な行動を促すことにあるため、経営者やリーダーにとってはもちろん、職場や家庭、教育現場など、あらゆる場面で有効なスキルとされています。コーチングを学んでいないと、無意識のうちに一方的な指示や否定的なコミュニケーションをしてしまう場合もあります。その結果、相手のモチベーションが下がり、主体的に行動する力を奪ってしまうことになりかねません。では、コーチングを学ぶことで、どのようにコミュニケーションが変わるのでしょうか?なお、コーチングについて詳しくは下記の記事をご覧ください。コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説2. コミュニケーションのよくない事例事例1:上司と部下のある会話上司:「○○さん、資料の提出期限、今日だったよね? もう送った?」部下:「すみません、まだ仕上がっていません……。」上司:「え? なんで? 期限はわかってたよね?」部下:「はい……。でも、他の業務が立て込んでいて……。」上司:「言い訳はいいよ。結局、いつ仕上がるの?」部下:「明日には……。」上司:「明日? クライアントに迷惑かかるのわかってる? 今すぐやって。」部下:「すみません、急いで仕上げます……。」上司:「もういいから、次からはこんなことがないように気をつけて!」3. よくない事例のポイントこの会話では、上司が部下を責める姿勢になっており、部下は委縮してしまっているように見えます。具体的には、以下のような問題点にまとめられます。(1) 一方的な指示・命令型の会話上司は部下に対して「言い訳はいいよ」「どうするつもり?」など、命令的な言葉で会話を進めたり、「今すぐやって」というような一方的な指示・命令型のコミュニケーションをとっています。これは、部下に対して圧力をかけ、会話を強制的に終わらせることになりがちです。部下の考えや状況を一緒に振り返ったり、考えたりする余地は少なく、問題解決に向けた建設的な対話ができません。(2) 質問の不十分さ上司の質問は「なんで?」という問いかけだけで、部下がどんな状況にあるのか、何が問題だったのかを詳しく聞いていません。「なんで?」という問いかけだけだと、部下の言い訳を誘発することで、問題の本質を把握したり、相手の自主性を引き出すことはできません。(3) 相手の話を傾聴していない上司は部下の話を聞くよりも、ただ責めたり、急かしているだけで、具体的な解決策を一緒に考えたり、部下がどうこの状況を打開するかを考えることはありません。傾聴は、コーチング的なコミュニケーションには欠かせないスキルの一つです。結果として、部下の主体性を引き出せない一方的な会話として終わってしまっています。4. コミュニケーションの良い事例事例2:コーチングスキルを活かした上司と部下の会話上司:「○○さん、今日が資料の提出期限だったよね。今どんな状況?」部下:「すみません、まだ仕上がっていません……。」上司:「そうか。何か問題があったの?」部下:「他の業務が立て込んでいて、時間が足りなくなってしまいました……。」上司:「なるほど。時間が足りなかったんだね。現時点での資料の完成度はどれくらい?」部下:「うーん、7割くらいだと思います。」上司:「そうか、それは具体的にどれくらい時間がかかりそう?」部下:「そうですね………あと2時間くらいだと思います。」上司:「そうか。できれば1時間後には資料を送れたらいいんだが、今からできる最善の方法は何だろう?」部下:「そうですね……。他のメンバーに一部手伝ってもらえば、1時間で仕上げられるかもしれません。」上司:「そうか。誰か思い当たる人はいる?」部下:「はい、〇〇さんにお願いできます。」上司:「わかった、では進めてみてくれ。なにかあったらすぐに声をかけてね。」5. 良い事例のポイント(1) 相手の考えを引き出す質問力効果的な質問を使うことで、相手が自分の考えを整理したり、深掘りすることができます。「それは具体的にどれくらい時間がかかりそう?」や「今からできる最善の方法は何だろう?」などのオープンな質問は、相手の思考を促進し、問題解決に向けた具体的な意見やアイデアを引き出すことができます。このような質問力は、相手が自ら答えを見つけ出す手助けになります。コーチングの質問スキルについて、詳しくはこちらの記事でも解説しています。【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト 避けるべきも紹介(2) 相手の言葉を待つ傾聴力この会話では、上司は部下の言葉を遮らず、じっくりと待ちながら部下が自分の考えをしっかりと話すことができるようにしています。相手の話を待ち、しっかりと耳を傾けることで、部下が自由に表現しやすくなり、信頼感が生まれます。コーチングの傾聴スキルについて、詳しくはこちらの記事でも解説しています。質問の価値を高めるコーチングスキル傾聴とは?NG例もあわせて徹底解説(3) 相手の自発的な行動を促すコミュニケーション上司は指示を出すのではなく、バラエティ豊かな質問によって、部下に自ら解決策を考えさせ、その自発的な行動を促しています。このようなコミュニケーションは、部下に責任感を持たせ、積極的に問題解決に取り組ませることが期待できます。6. コーチングスキルを身に着けるメリット事例比較からわかるように、コーチングスキルを学ぶことで、相手とのコミュニケーションが大きく変わります。具体的には、質問力や傾聴力を活用して、相手の考えや感情を引き出し、その人の可能性を最大限に活かすことができるようになります。これにより、単なる指示や解決策を提供するのではなく、相手が自分で問題を発見し、解決に向けて行動できるようにサポートできるようになります。また、コーチングスキルは、仕事の場面だけでなく、家庭やさまざまなコミュニケーション場面でも活かすことができるので、まさに一生もののスキルともいえます。コーチングを学ぶならラッセルウェルビーイングコーチングカレッジがおすすめラッセルウェルビーイングコーチングカレッジは、ICF国際コーチング連盟認定を受けているスクールであり、特にウェルビーイングコーチングを学べる点が特徴です。経験豊富で国際資格を持つ講師のもと、少人数制で行われ、心理学に基づく他者支援のスキルを高めることができます。7. まとめ本記事では、よくある会話と、コーチングスキルを活かしたコミュニケーション事例の比較を解説しました。コーチングは、相手自身の答えを引き出し、自発的な行動を促すコミュニケーション技術です。コーチングスキルを身につけることで、一方的な指示や否定的な言葉を避け、相手の主体性を引き出すコミュニケーションが可能になります。ぜひコーチングのスキルを活かして、コミュニケーション能力を向上させましょう。監修者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士、ウェルビーイング経営アドバイザー。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。最終更新日2025年3月11日■関連記事・質問の価値を高めるコーチングスキル傾聴とは?NG例もあわせて徹底解説・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト 避けるべきも紹介・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・コーチングを学ぶ最適の方法は?自分にあう学習法やスクールの選び方を紹介■人気記事・【GROWモデルとは?】コーチングの質問の型とすぐに使える具体的な質問例もあわせて紹介・【コーチングの承認とは?】人の成長を促すスキルを3つの効果と注意点をあわせて紹介・コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説