コーチングにおいて、クライアントが安心して本音を話せる環境をつくることはとても重要です。その鍵となるのが「ラポール」、つまり信頼関係です。本記事では、ラポールの基本的な概念や重要性、そして具体的にどのように築いていくのかについて解説します。1. ラポールとは?ラポールとは、フランス語で「関係」や「つながり」を意味する言葉で、人と人との間に築かれる「信頼関係」のことです。もともとは心理学やセラピーの分野で、カウンセリングを円滑に進めるための重要なコミュニケーション手法として使われてきました。近年ではその概念が広がり、ビジネスシーンにおいても話し手と聞き手の間に築かれる信頼関係を示す言葉として広く活用されています。人は誰しも否定されるかもしれないという不安を抱くことがあるからこそ、「何を言っても否定されない」「ジャッジされない」という安心感が必要です。その安心感を生み出すのがラポールなのです。2. なぜラポールがコーチングに重要なのか?コーチングは、コーチとクライアントの対話そのものだからこそ、クライアントが安心して本音を話せる関係性が重要であり、ラポールが築かれることで初めて、深い気づきや行動変容が生まれやすくなります。ラポールは、コーチとクライアントの信頼の架け橋のようなものですが、この橋は非常に繊細で、簡単に切れてしまうものです。ちょっとした言葉や態度が原因で信頼が崩れることがあるため、毎回、丁寧にかけ直すことが重要です。3. ラポールを築くための3つの基本要素ラポールを築くためには、信頼関係を構築するスキルを身につけることが重要です。特に、以下の3つの要素が効果的だとされています。(1) ペーシング:相手に合わせる技術ペーシングとは、クライアントの話し方や態度、感情に寄り添い、自然に歩調を合わせることを指します。たとえば、相手が落ち着いた口調で話しているときは同じように穏やかなトーンで対応し、逆にエネルギッシュな雰囲気ならそれに合わせたリズムで話すことで、クライアントに安心感を与えます。この「相手に合わせる」姿勢が、心の距離を縮め、信頼関係の土台となります。(2) ミラーリング:相手の言動を鏡のように映すミラーリングは、相手の動作や表情、姿勢などをさりげなく真似ることで、無意識のうちに親近感を生み出す手法です。たとえば、クライアントが腕を組んで話している場合、コーチも自然に腕を組むと、相手は「この人は自分と似ている」と感じやすくなります。ただし、わざとらしく模倣すると逆効果になるため、あくまで自然な形で行うことが大切です。(3) バックトラッキング:相手の言葉を繰り返すバックトラッキングとは、クライアントが発した言葉をそのまま、あるいは要約して繰り返すことで、相手に「きちんと話を聞いてもらえている」と感じてもらう技術です。たとえば、「最近仕事が忙しくて大変なんです」と言われたときに、「お仕事がとても忙しくて大変なんですね」と返すことで、共感や理解を伝えることができます。これにより、クライアントは安心して自己開示しやすくなります。ただし、やりすぎると違和感や不信感を与えかねないので、あくまで適切な範囲内で行いましょう。4. ラポールが築けることで得られるメリットラポールがしっかり築かれることで、コーチングの場がより効果的になり、双方にとって良い影響をもたらします。具体的には、以下のようなメリットがあります。(1) クライアントが思っていることを打ち明けやすくなるラポールがあることで、クライアントは安心して自分の気持ちを表現しやすくなります。たとえば、質問の意図がわからない場合や、答えにくいと感じる場面でも、正直に「わからない」「答えたくない」と伝えられるようになります。このように、クライアントが無理をせず本音で話せる環境が整うことは、コーチングの質を高めるうえで非常に重要です。(2) コーチが質問しやすくなるラポールによって、コーチとクライアントの間に「安心・安全な場」が生まれると、コーチも本質的な問いを投げかけやすくなります。クライアントにとって少し踏み込んだ質問でも、信頼関係があることで受け入れられやすくなり、深い気づきにつながる可能性が高まります。(3) コーチとクライアントの共同の場として機能するコーチングは、コーチが一方的に導くものではなく、クライアントとともに作り上げるプロセスです。そのため、ラポールのもとに、お互いが対等な立場で協力し合える関係が生まれることで、コーチングは単なる対話ではなく、信頼と共創の場となります。これは、クライアントの成長を最大限に引き出すために欠かせない要素といえるでしょう。5. まとめラポールは、相手との信頼関係を築く上で、最も大切な要素の一つです。ビジネスや日常生活にも活かせるスキルであるとともに、コーチングにおいては、クライアントが安心して本音を話せる環境をつくる鍵となるものです。ラポールが築かれることで、信頼と安全に基づいた対話が可能となり、結果として、コーチングの質が向上し、クライアントの気づきや行動変容につながります。ぜひラポールを意識して、信頼関係を構築していきましょう。コーチングを学ぶなら、実践的なスキルを身につけられるラッセルウェルビーイングコーチングカレッジがおすすめです。ICF認定スクールの中で日本で唯一「ウェルビーイング」を冠したプログラムを提供。スキルとマインドを兼ね備えたウェルビーイングコーチングを習得することができます。監修者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PPCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。最終更新 2025年3月7日■関連記事・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・コーチングを学ぶ最適の方法は?自分にあう学習法やスクールの選び方を紹介・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト|避けるべき例も紹介■人気記事・ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは・【GROWモデルとは?】コーチングの質問の型とすぐに使える具体的な質問例もあわせて紹介・コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説・ICFコーチング資格の難易度比較|ACC・PCC・MCCの取得要件と実践のポイント・ウェルビーイングコーチングとは:意味や資格について徹底解説