目次1. ティーチングとコーチング人材育成の現場では、従来の「教える」スタイル=ティーチングだけでなく、「引き出す」スタイル=コーチングが強く注目されるようになっています。変化のスピードが速い時代において、単に知識やスキルを伝えるだけでは対応しきれず、自ら考え行動できる人材の育成が求められているからです。特にビジネスや教育の分野では、「いつティーチングを用い、どの場面でコーチングを活かすべきか」を見極めることが成果に直結します。両者は対立するものではなく、目的や状況に応じて使い分けることで、人材の成長を大きく後押しすることができます。本記事では、ティーチングとコーチングの違いを整理し、それぞれのメリット・デメリットを解説したうえで、実際にどのように使い分けると効果的なのかをご紹介します。2. ティーチングの特徴とは?ティーチングとは、知識やスキルを「教える」ことで相手を導く指導法です。学校教育や企業研修、eラーニングのコンテンツ、さらには社内のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)など、多くの教育の場面で導入されています。特に新入社員研修や営業研修など、未経験者や若手社員に対して業務のやり方や手順を効率よく伝える際に役立ちます。たとえば、部下や後輩が入社直後に抱える「仕事の流れがわからない」「顧客への対応が不安」といった悩みは、ティーチングを通じて基本的な資料や事例を提示し、指示を出すことで早期に解決できます。そのため、人事部門や管理職にとって、ティーチングは人材育成の“スタートライン”を支える重要な機能を持つといえます。3. ティーチングのメリット・デメリットメリット知識を短期間で効率的に伝えられる会社として標準化された教育を行いやすい部署やチーム全体の能力底上げに貢献社員や若手にとって「何をすればよいか」が明確になるため、学習意欲が高まり、一定のレベルまで早く到達できます。営業資料やマニュアルの一覧を整備すれば、誰でも同じ手順で成果を得られるため、人的資本の有効活用にもつながります。デメリット一方で、ティーチングは一方的になりやすく、自主性や問題解決力を育てるのが難しいという課題もあります。教えられる内容が多いと、本人の思考よりも指示に従うことが中心になり、主体的な行動や目標達成に結びつかない場合があります。そのため、ティーチングだけではなく、別のアプローチとの組み合わせが求められます。4. コーチングの特徴とは?コーチングは問いかけや対話を通して、本人の中から答えを導き出すアプローチです。知識を与えるティーチングと異なり、相手自身が考える力を持ち、納得した上で行動する点が大きな特徴です。たとえば、管理職が部下と1on1ミーティングを実施する際、ただ業務指示を出すのではなく「今の課題をどう解決したいと思う?」「将来的にどんな役割を持ちたい?」と質問を投げかけると、本人の目標や価値観を引き出せます。これは単なる業務指導以上に、社員のモチベーションや長期的なキャリア形成に役立ちます。5.コーチングのメリット・デメリットメリット主体性や自主性を促進本人の強みや価値観を引き出し、長期的成長につながるチーム内コミュニケーションや信頼関係の強化特に、管理職やリーダーがコーチングを活用することで、部下のやる気を高め、経営目標の達成に向けた協力体制を築けます。デメリット成果が現れるまでに時間がかかる知識を即座に習得させる場面では非効率コーチ役となる上司の能力や経験によって結果が左右されるこのように、コーチングは「短期的な知識習得」には向きませんが、長期的に社員の能力開発を促す有効な手段となります。。6. ティーチングとコーチングの違い1. アプローチの方向性ティーチング:知識を「与え」、会社の方針や制度に合わせた内容を効率的に伝えるコーチング:問いかけを通じて「引き出し」、本人が考え、目標を導き出すティーチングは「教師から生徒へ」という一方向の知識伝達型アプローチです。教師や上司が持っている知識やノウハウを、相手にわかりやすく伝えることで理解や習得を促します。一方で、コーチングは「問いかけによる対話」を通して、相手の中に眠っている答えや可能性を引き出す双方向型のアプローチです。ここでは、相手自身が考える時間を重視します。2. 成果が現れるスピードティーチング:短期間で一定レベルに到達可能コーチング:時間をかけて自主性と問題解決能力を育てるティーチングは、必要な知識やスキルを短期間で効率的に伝えられるため、即効性があるのが特徴です。例えば、新しい業務の手順やルールを教えるときに適しています。反対に、コーチングは相手が自ら気づき、納得して行動するまでに時間を要しますが、その分「自分で考えて行動する力」が身につきやすく、長期的な成長を期待できます。3. 主体性の育ち方ティーチング:受け身になりやすく、自主性が少ないコーチング:主体性や創造性を促し、社員が自ら考えて動くティーチングでは、学ぶ側は受け身になりやすく、「教えてもらうのが当たり前」という姿勢に陥る可能性があります。それに対して、コーチングでは主体的な思考が促されるため、「自分で考える習慣」や「自ら行動を選択する力」が育ちます。これが、チームや組織でのリーダーシップ発揮や自律的なキャリア形成に大きくつながります。4. 適している場面ティーチングが有効な場面新しい知識・スキルの習得、基礎的な教育、短期的な成果が求められるとき。入社前後の新人教育、営業手順の習得、資格試験対策など。コーチングが有効な場面キャリアの方向性を考えるとき、リーダーシップ開発、モチベーションや目標達成をサポートしたいとき。人事評価面談、キャリア開発、リーダーシップ育成、若手社員のモチベーション向上など。このようにティーチングとコーチングは対立する概念ではなく、状況に応じて組み合わせることで、より効果的な人材育成が可能になります。7. ラッセルで学べるコーチングの強みウェルビーイングを基盤にした独自のメソッドラッセルのコーチングは、単なるスキル伝達ではなく「人がよりよく生きるための土台=ウェルビーイング」に基づいています。自己理解や他者理解を深めることを重視し、相手の内側に眠っている可能性を引き出すアプローチが体系化されています。この独自メソッドにより、表面的な課題解決にとどまらず、長期的な成長や幸福感を伴う支援が可能になります。ICF認定スクールとしての信頼性ラッセルは国際コーチング連盟(ICF)認定スクールとして、世界基準の教育プログラムを提供しています。ICFはコーチングにおける最も権威ある国際資格の一つであり、認定スクールで学ぶことは「質の担保」を意味します。これにより、受講生は安心して学習に取り組めるだけでなく、資格取得を通じてキャリアの幅を広げることができます。実践を通じた学びの場ラッセルでは、知識をただインプットするだけでなく、実際にセッションを行いながら実践的に学ぶ機会が豊富に用意されています。少人数制クラスで講師や仲間と対話し、リアルタイムで質問やフィードバックを受けられるのも大きな特徴です。さらに、イーラーニングを活用した事前学習や振り返りの仕組みも整っており、「学んだことを即、実践に活かす」ことが可能です。8. まとめ:ティーチングとコーチング人材育成の場面では「ティーチングで基礎を教え、コーチングで応用力を伸ばす」という二段構えが有効です。管理職や人事担当者がこの両方を適切に活用することで、社員の能力を高めるだけでなく、経営課題の解決や組織全体の成長にもつながります。現在では、無料で参加できるセミナーやダウンロード資料、具体的な事例集なども豊富に存在します。社内教育の手法を確認し、自社に合った育成コンテンツを導入することが重要です。ティーチングとコーチング、それぞれの特徴を理解し、状況に合わせて使い分けることで、部下・後輩・若手社員の成長を促進し、企業の人的資本をより高めることができるでしょう。最終更新日:2025年8月26日著者プロフィール中原阿里:ICF国際コーチング連盟プロフェッショナルサーティファイドコーチ(PCC)、弁護士、公認心理師、上級心理カウンセラー、ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ代表、CLARIS法律事務所代表弁護士、法務博士。奈良女子大学英文科英語英文学科卒業、関西学院大学大学院司法研究科修了、米国イェール大学Science of Well-Being Course修了。弁護士として活動しつつ、2019年ウェルビーイングのためのアカデミックなコーチングスクール「ラッセルウェルビーイングコーチングカレッジ」を設立。創立以来講師を務め多くのコーチを育成しながら、上場企業からNPO法人、大学、裁判所まで幅広い対象にコーチング研修を提供。現役の弁護士かつプロコーチとしても多数のクライアントを支援する。著書に「弁護士業務の視点が変わる!実践ケースでわかる依頼者との対話42例 コーチングの基本と対応スキル」(日本加除出版)など。■関連記事・コーチングとは?効果や意味、メリット、学び方をプロコーチがくわしく解説・コーチングの効果的な勉強法は?学び方やおすすめのスクールの選び方について・コーチングを学ぶ最適の方法は?自分にあう学習法やスクールの選び方を紹介・質問の価値を高めるコーチングスキル傾聴とは?NG例もあわせて徹底解説・【コーチングの質問とは?】質問の具体例をまとめた保存版リスト 避けるべきも紹介・ー2025年版ー【プロコーチが選ぶ】コーチングの学びにおすすめ本7冊と効果的な学び方とは■人気記事・【GROWモデルとは?】コーチングの質問の型とすぐに使える具体的な質問例もあわせて紹介・【コーチングの承認とは?】人の成長を促すスキルを3つの効果と注意点をあわせて紹介・コーチングの学びに自己理解が大切な理由とは?重要性と方法を解説・メンタリングとコーチングはどう違う?プロコーチが徹底解説・弁護士がコーチングを学ぶ意味とは?依頼者コミュニケーションをアップデートする・コーチに向いている人とは?ーコーチングの特徴と習得すべき3つのスキルを解説ー・ラポールとは?コーチングにおける信頼関係の築き方とその重要性・コーチングのテーマ設定で気をつけることとは?―絶対に聞くべき5つのポイントを解説―・コーチングによるコミュニケーション能力の向上とは?―事例比較でポイントを紹介―